2026年、新しい年の始まりに、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)理事長の松尾豊氏から、心温まる年頭所感が届きました。ディープラーニングという技術が、私たちの暮らしや社会をどう変えていくのか、そして私たちがどうAIと共に歩んでいくべきか、その道筋が示されています。
2025年:AIが社会インフラとなった一年
2025年は、まさに「生成AIが社会インフラとなった」と語られる一年でした。企業、教育機関、そして行政に至るまで、あらゆる場所でAIの活用が始まり、私たちの生活に深く根ざしていきました。AIはもはや一部の専門家だけのものではなく、誰もがその恩恵を受け、活用していくべき「社会の基盤」へと進化を遂げたのです。
技術の面でも目覚ましい進展がありました。AIエージェントの進化により、企業の業務効率は大きく向上し、各社から次々と発表される最先端のAIモデルが、既存の性能を塗り替えていきました。特に注目されたのは、現実世界で活躍する「フィジカルAI」の発展です。各国から驚くようなデモンストレーションが披露され、日本企業も関わるスターゲートプロジェクトのような大規模な投資計画も相次ぎ、AIが描く未来の具体的な姿が、より一層鮮明になりました。
しかし、光があれば影もあります。OpenAIのSora 2やGoogleのNano Bananaといった高性能な動画・画像生成AIが、著作権の問題を改めて浮き彫りにするなど、AIの進化が社会にもたらす倫理的・法的課題も多く議論されました。中国のDeepSeekがリリースした高性能なオープンソースモデル「R1」が株式市場に大きな変動をもたらした「DeepSeekショック」は、AIが経済に与える影響の大きさを私たちに示しました。
日本のAI戦略とフィジカルAIへの挑戦
このような世界的な動きの中で、日本もAIとの向き合い方を明確にしました。2025年5月には「AI法」が成立し、同年9月1日には全面施行。イノベーションの促進とリスク対応を両立させる、先進的なアプローチが各国からも高く評価されました。この法律に基づき、人工知能戦略本部が設立され、人工知能戦略担当大臣が任命されるなど、国を挙げてAI推進の体制が整えられました。
日本が特に力を入れている分野の一つが「フィジカルAI」です。ロボット技術とAIの融合は新たなステージに入り、AIロボット協会(AIRoA)が中心となり、ロボットの現場データ収集や大規模なロボット基盤モデルの構築プロジェクトが進められています。製造、物流、小売、災害対応といった幅広い分野で、AIとロボットが連携し、人の力を拡張する社会インフラの基盤づくりが進められており、これはまさに「実装されるAI社会」を象徴する取り組みと言えるでしょう。
AIを使いこなす人材を育てるJDLAの取り組み
AIが社会の基盤となる中で、最も重要となるのは、AIを「作る」だけでなく、もっと多くの人がAIを「使いこなす」能力を身につけることです。AI人材の育成は、もはや一部の先進的な取り組みではなく、社会全体で取り組むべきテーマとなっています。
JDLAはこれまで、AIに関する知識を問う「G検定」と、AI開発スキルを認定する「E資格」を通じて、多くのAI人材を育成してきました。特に昨年10月からは、全国の指定会場で受験できる「G検定 Onsite」を導入。これにより、より多くの人が自身のライフスタイルに合わせてAI学習に取り組めるようになりました。2026年からはオンラインと会場試験を合わせて年間9回の開催となり、累計合格者数は12万人を超えるなど、AIを活用する人材の基盤は着実に広がりを見せています。
また、高専生がAIとものづくりを融合させた課題解決に挑む「高専DCON」は、未来を担う若い世代の育成に貢献しています。2025年度にはNHK総合で特別番組が放送され、高専生たちの挑戦が全国に紹介されました。技術教育の枠を超え、社会とつながる新しい学びのフィールドワークモデルとして、その価値が認められています。
AI社会の健全な発展のためには、技術だけでなく、法や制度の整備も不可欠です。JDLA内に設置された「法と技術の検討委員会」では、有識者による議論を重ね、報告書を公表。現在は、AI社会の健全な発展に向けた実践的な提言の策定を進めています。
JDLAは現在、正会員・賛助会員108社、行政会員35団体と、多くの組織に支えられています。2026年、JDLAは「学びと信頼の循環」をさらに広げ、すべての人がAIと共に成長し、新たな価値を生み出す社会の実現を目指していきます。
AIがもたらす変化は、きっと私たちの想像を超えるものとなるでしょう。この大きな流れの中で、私たち一人ひとりがAIを学び、活用し、社会の力へとつなげていくことが大切です。JDLAは、そのための確かな学びの場と機会を提供し続けています。


